ワ二ワニパニック
僕と健がラコステの前に立ったのは誰も予期できぬことでした。
「服屋で働きたい」
そんな言葉を健から聞くことになるなんて誰が予想できたでしょう。
しかもその店は「ラコステ」。ワニのマーク。
何でだ。せめてそこは「フレッドペリー」と言ってくれ。お前好きじゃん。全然納得いかないぞ。
しかし、私も健の断固とした決意にやむなく説得を諦め、一緒に下見にいくことにしました・・・。
所は変わって、ラコステの店内。
店はかなり狭く、路地裏にある古着屋の様。店員が三人いました。皆カジュアルで清潔で、オレンジ色を効果的に配色したスタイリングでした。意外にも若そうで、大学生くらいに見えました。働くにおいて敷居は高くなさそうですが、健が働くイメージは未だ出来ず。健、ほんとにここでいいんだよな?
無言で店を出てからしばらくして、僕は健に言いました。
「面接の時は、オレンジ色の服着たほうがいいよ、きっと」
健は肯定とも否定ともとれるように「うん」と言いました。
しかし、今の僕にはこのくらいの言葉しかかけられません。あとは健がどうするかです。まあ、がんばれよ、健。
そして、朝。夢から覚めた僕は如何ともしがたい憂鬱さを抱えたまま家を出ました。


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